「期限前償還率モデル構築の一提案とMBSパフォーマンス要因分解」
勝俣 基 氏
(日興シティグループ証券株式会社 債券投資戦略部
ボンド・ポートフォリオ・アナリシスディレクター,
早稲田大学大学院ファイナンス研究科非常勤講師)


2006年2月13日(月)19:30〜20:30


住宅金融公庫MBSのパフォーマンスは借り方の期限前償還により変化するので、 このモデル化に市場参加者は大きな関心を持っている。 日興シティグループ証券の期限前償還モデルは、旧ソロモン・ブラザーズ社のモデルに依拠している。 最初に米国における期限前償還モデル開発の歴史が述べられ、期限前償還モデルの基本用語の解説が行われた。
談話会の様子
日本では、過去40回の回号データが利用可能であるが、この間、金利水準の急激な変化、 銀行競合商品の登場時のメディア効果等、一過的とも思えるイベントにより期限前償還率に大きな変化が生じている。 観測された変化が、定常的な要因によるものなのか、一過的なものなのかをチェックした後に予測モデルを構築することが重要である。

実際に日本で早期償還が発生する背景にあるエコノミックスを詳細に解明するのは難しいので、経済モデル (例えば、比例ハザード・モデル)等の先入観にとらわれずにデータを精緻に分析することを心掛けている。 例えば、住公期限前償還データでは地域別の情報が利用可能であるが、これを利用すると、 地域別に期限前償還の速度の特性が異なることが分かる。 回号毎に地域別構成比に違いがあり、回号別期限前償還率の違いは、この比率の違いでかなりの部分が説明できる。 MBSの相対的割安、割高を判定する債には、OASが利用されるが、このようなデータの特性を無視して行うと、 計算された値は投資家に誤解を与える危険性がある。

現在、住宅金融公庫MBSの人気は高く、最終投資家のポートに沈んだ玉がセカンダリー市場に出てくる機会は少ない。 しかし、セカンダリー市場が成熟してくれば、業者間のモデルの違いがより注目され、 場合によっては業者間で裁定取引が生じることも予想している。

以上


執筆・進藤 久佳(野村證券金融経済研究所,応用経済時系列研究会・理事)


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