「オルタナティブ投資 −ヘッジファンドの計量的側面とリスク・マネジメント−」
桜井 歩・小柳 芳文(日興コーディアル証券株式会社)」


2004年10月25日(月)19:30〜20:30


日興コーディアル証券株式会社アセット・マネジメント・マーケティング部の部長でおられる桜井歩氏は、わが国において最近脚光を浴びているオルタナティブ(代替)投資の中で、ヘッジファンド市場について説明され、そして、投資運用室の小柳芳文氏は、オルタナティブ投資の種類からヘッジファンドのリスク・リターン特性やリスク管理まで全般にわたり説明された。

わが国でのヘッジファンドの市場規模は、2003年末に3.6兆円、2004年末には5兆円と予想される。このようにヘッジファンドへの投資規模が拡大している理由は、国内の長い間続いている超低金利を背景とした機関投資家の運用難からである。当初、わが国においてヘッジファンドへの投資は大手機関投資家から始まったが、現在では、個人投資家も含めすべての投資家がヘッジファンドへ投資するまでに至っている。


基本的に、ヘッジファンドを含めオルタナティブ投資は、一般的に、上場株式や公社債等、主として市場で取引され流動性が確保されている伝統的な投資対象以外への投資を指す場合が多い。その種類としては、@プライベート・エクイティ(ベンチャー・キャピタル、バイアウト他)、Aヘッジファンド(株式ロング・ショート、マクロ他)、B不動産投資(REIT、証券化商品他)、Cその他(コモディティ、天然資源など)が挙げられる。オルタナティブ投資の意義は、従来の株式や債券などとの相関が低く、分散投資効果を期待でき、また、通常ではアクセスしにくい投資機会への提供である。オルタナティブ投資の中で、Aのヘッジファンドは、多様であり、その戦略として@株式ロング・ショート型、Aリラティブ・バリュー型、Bイベント・ドリブン型、Cその他(Global Macro、Managed Futures, Emerging Marketなど)が挙げられる。とりわけ、@株式ロング・ショート型の運用残高の規模は、ヘッジファンド全体の4割強を占めると考えられる。株式ロング・ショート型は、基本的に相対的に値上がりが期待できる個別株式銘柄群をロングし、相対的に値下がりが懸念される個別株式銘柄群をショートする戦略である。



ヘッジファンドは、一般に投資対象資産のボラティリティ上昇に対しネガティブな影響を受ける場合が多い。また、ヘッジファンドの収益特性は、その収益率分布がファットテールであり、正規分布では極めて稀なイベントが起きている。特に、リラティブ・バリュー型戦略においてこの傾向が顕著である。従って、ヘッジファンドのリスク管理を考える場合、@ファットテール、非正規性を考慮したVarやAリスク・リミットの設定、Bリスク・バジェットに基づくエクスポージャー管理、Cストレステスト、シナリオ分析の実行が重要である。特に、ファットテール、非正規性を考慮したVarによる管理として、ジャンプ過程を考慮したリスク・モデルの構築が必要である。基本的に、ヘッジファンドを評価する上で、過去のトラッキングレコードはあまり参考にならず、投資対象市場の分析、収益機会発生のメカニズムの把握、収益化に必要な想定期間など様々な視点から評価することが大切である。
以上


執筆・津田 博史(ニッセイ基礎研究所)


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