日 時 |
2016年7月2日(土) 10:30-17:00 |
会 場 |
立教大学 池袋キャンパス 12号館第1・2会議室 東京都豊島区西池袋3-34-1 (JR 山手線・埼京線・高崎線・東北本線・東武東上線・ 西武池袋線・地下鉄丸ノ内線・有楽町線「池袋駅」下車。 西口より徒歩約7分。) http://www.rikkyo.ac.jp/ |
午前の部 : 座長 後藤 康雄(経済産業研究所) 報告35分,討論・質疑応答15分,計50分 |
■ 10:30-11:20 |
「内閣支持率と株価の因果関係」 川崎 能典(統計数理研究所) |
コメンテーター:飯塚 信夫(神奈川大学経済学部) |
■ 11:20-12:10 |
「最近の市場の変動とスマートベータ運用の関連」 西山 昇(Dragons' Desk Ltd./千葉商科大学会計大学院) |
コメンテーター:内山 朋規(首都大学東京) |
■ 12:10-13:10 |
昼食/理事会(立教大学 池袋キャンパス 12号館第3会議室) |
■ 13:10-13:25 |
総会(立教大学 池袋キャンパス 12号館第1・2会議室) |
午後第1部 : 座長 笛田 薫(岡山大学大学院環境生命科学研究科) |
■ 13:25-14:15 |
「創業企業の信用リスクモデル」 尾木 研三*(((株))日本政策金融公庫国民生活事業本部/慶應義塾大学大学院理工学研究科) 内海 裕一(((株))日本政策金融公庫国民生活事業本部) 枇々木 規雄(慶應義塾大学理工学部) |
コメンテーター:赤司 健太郎(学習院大学経済学部) |
■ 14:15-15:05 |
「AT1(CoCo)債の利払い停止・元本削減確率に関する実務的計算方法に関する提案」 阿竹 敬之(SMBC日興証券株式会社/ビジネス・ブレークスルー大学大学院) |
コメンテーター:鎌田 康一郎(日本銀行金融研究所) |
午後第2部 : 座長 川崎 能典(統計数理研究所) |
■ 15:20-16:10 |
「多次元拡張ホークスモデルによる複数の金融市場の連動性分析」 国友 直人(明治大学) 江原 斐夫(金融庁) 栗栖 大輔*(東京大学) |
コメンテーター:山中 卓(日本銀行金融機構局) |
■ 16:10-17:00 |
「Term Structure with Smooth Transition」 椋木 伸吾*(大阪大学大学院経済学研究科) 大屋 幸輔(大阪大学大学院経済学研究科&MMDS) |
コメンテーター:小林 武(名古屋商科大学経済学部) |
記号*は,複数著者による発表での,実際の登壇者を意味します. |
「内閣支持率と株価の因果関係」 川崎 能典(統計数理研究所) |
内閣支持率と株価の因果関係は、学術的であるないに関わらずさまざまなレベルで論じられることの多い論題である。本報告の目的は、定常時系列解析における標準的な因果分析法のひとつである、グレンジャーの因果性検定の枠組みに乗せて、議論の出発点程度の認識を確立しておくことにある。内閣支持率は1978年3月から2015年11月までの月次データを取り、それに合わせる形で株価収益率(日経平均月次終値ベース)を使用する。内閣支持率に関しては欠測が存在するが、今回は確立差分方程式+ノイズというモデルから得られる状態平滑化値で補間した。グレンジャーの因果性検定の枠組みに基づけば、内閣支持率から株価収益率への因果性は見られない。一方、株価収益率から内閣支持率への因果性は統計的には有意に検出されるが、支持率の変動の説明という観点からはごく限られた影響にとどまると言うべきである。また、内閣発足直後は概して支持率が高いという「ハネムーン効果」の存在はしばしば言われるが、ハネムーン効果は内閣支持率に対してだけでなく、株価収益率に対しても高度に有意である。 |
「最近の市場の変動とスマートベータ運用の関連」 西山 昇(Dragons' Desk Ltd./千葉商科大学会計大学院) |
スマートベータの資産運用手法の中のひとつに最小分散ポートフォリオの構築がある。それはポートフォリオ内の個別銘柄の分散を最小化する方向にポートフォリオを組む考え方である。ファンドを運用する際は、一定の期間(月次)ごとにリバランスを実行する。市場環境(ボラティリティの高低)により銘柄構成(ウェイト)が変化する。相場が急変すると当然リバランスによる売買銘柄の中味と量が変化する。それによって影響を受ける他の運用スタイルがあるはずである。 たとえばヘッジファンドのロングショート運用は今年年初からの市場変動の影響を大きく受けたスタイルの一つである。パフォーマンス変動のメカニズムを過去データから検討する。仮に最小分散ポートフォリオのリバランスから影響を受けたと立証できた場合は、そのインパクトを小さく調整する可能性を探る。 |
「創業企業の信用リスクモデル」 尾木 研三*(㈱日本政策金融公庫国民生活事業本部/慶應義塾大学大学院理工学研究科) 内海 裕一(㈱日本政策金融公庫国民生活事業本部) 枇々木 規雄(慶應義塾大学理工学部) |
わが国では、80 年代後半から企業数の減少が続いている。創業を増やすため、政府はさまざまな支援策を打ち出しており、この動きを受けて、銀行も創業企業への融資を積極化している。実績が増えるにつれて、創業企業の信用リスク計測が課題になってきた。中小企業の信用リスク計測には、主に決算書の数値から統計手法を用いて信用リスクを数値化する信用リスクモデルが使われる。ただ、これから創業する企業は決算書がないため、既存のモデルは使用できない。また、創業企業向けのモデルや非財務変数だけでリスク評価するモデルは、われわれの知る限り存在しない。 先行研究をみると、Gonçalves et al. (2014)は、1,430 社のポルトガルの創業企業の 3 年間のパネルデータを使って、デフォルトの決定要因を分析している。鈴木(2012)は、2,897 社のわが国の創業企業の 5 年間のパネルデータを用いて、廃業要因を分析している。これらの研究は、いずれも要因分析が目的であり、信用リスクモデルの構築や評価は行っていない。また、創業前の非財務変数だけではなく、創業後の財務変数も使用している。そこで、本研究では、日本政策金融公庫が保有する34,470 社の創業企業の創業前の非財務変数だけを用いて、創業企業の信用リスクモデルを構築する。説明変数の選択にあたっては、デフォルト要因を「人的要因」「金融要因」「業種要因」の三つのカテゴリーに分けてロジット分析する。 分析の結果、人的要因として「開業の計画性」「斯業経験年数」「年齢」などが有意になった。経営に必要な知識や体力が創業者に備わっているかどうかを評価していると考えられる。また、金融要因として、創業者の資産負債状況が有意になった。主に創業者個人の資金調達力を示している可能性がある。最後に、業種要因として、7つの業種グループのダミー変数が有意になった。デフォルト率の低い 4 つの業種グループは収益率が高いか競争が少ないという特徴がある一方、デフォルト率が高い 3 つの業種グループは、収益率が低いか競争が激しいという特徴があり、業界の経営環境を表していると思われる。分析で有意になった変数を用いてモデルを構築した結果、AR 値は 57%となり、実務でも利用可能であることが確認できた。 |
「AT1(CoCo)債の利払い停止・元本削減確率に関する実務的計算方法に関する提案」 阿竹 敬之(SMBC日興証券株式会社、ビジネス・ブレークスルー大学大学院) |
世界的な金融危機後に強化された金融機関の自己資本比率規制バーゼル3では、規制自己資本のうちその他Tier1(AT1)、Tier2などの普通株式以外の資本性商品の規制自己資本への算入要件が厳格化された。特に、AT1が負債資本調達の場合、自己資本比率が一定水準を下回る(トリガーに抵触する)と元本削減や株式転換が発生したり、利払いが停止するなどバーゼル2までの劣後債や優先出資証券とは異なる商品性になっている。 CoCo(Contingent convertible)債のプライシングに関しては、エクイティ・デリバティブ・アプローチ、クレジット・デリバティブ・アプローチ、構造(Structural)アプローチなどがある。こうしたアプローチでは、株価変動、資産と預金の比率を基にトリガーに抵触する確率を決定する方法などが提案されているが、AT1債のトリガーの基準となるCET1比率の変動は株価や資産と預金の比率から求められる変動とは異なる。 銀行の自己資本比率は以下の式で計算される。 自己資本比率=自己資本/(リスク・アセット) 分子の自己資本や分母のリスク・アセットは規制変更により過去データとの連続性がないため、過去データを基にヒストリカル・ボラティリティを計算することができない。 ここで、分子の自己資本については、増資等の資本性商品の発行がない、含み損益の変動がないなどの仮定を置けば、前期の自己資本から下記のように求めることができる。 自己資本=前期末の自己資本+純利益-(配当+自社株買い+役員賞与) 大きな損失を計上した場合には、配当支払い、自社株買い、役員賞与支払いなどは行われないと仮定すれば、自己資本のダウン・サイドの変化幅は純利益で代替できることになる。 よって、下式のように(純利益/リスク・アセット)の平均的な変化を求めれば、自己資本比率のボラティリティを計算することができる。 上式で計算された自己資本比率のボラティリティが正規分布に従うと仮定すれば、直近の自己資本比率(CET1比率)が1年後に資本バッファー最低所要水準を下回る確率(利払い停止確率)や元本削減のトリガー水準を下回る確率を簡易に求めることができる。 |
「多次元拡張ホークスモデルによる複数の金融市場の連動性分析」 国友 直人(明治大学) 江原 斐夫(金融庁) 栗栖 大輔*(東京大学) |
現在では統計的方法の開発が進み, 数秒ごとに観測される非常に高頻度の金融データ分析が可能である. このような高頻度の金融データから見れば, 数ヶ月, 数日に一度といった時々しか観察されない, 相対的に稀な現象である金融市場のマクロ的変動はしばしば経済社会に大きな影響を及ぼし, さらに国境を越えて多くの国の経済や市場に影響を及ぼすことが知られている. |
「Term Structure with Smooth Transition」 椋木 伸吾*(大阪大学大学院経済学研究科) 大屋 幸輔(大阪大学大学院経済学研究科&MMDS) |
Dynamic term structure model does not adequately represent the process
of structural change and the zero lower bounds. The regime shift model
has been explored to conquer the difficulties. Although many studies incorporate
Markov switching into their models, the changes in the levels are abrupt,
and not gradual. For Japanese Government Bonds, the level of the short
rate shifts gradually, rather than switching abruptly. Previous studies
indicate that affine term structure models do not fit the distribution
of yields because the specification of the market price of risk is too
restrictive. We introduce the affine term structure model that allows for
a smooth level shift of the market price of risk since the smooth transition
scheme suitably depicts the time varying nature of the dynamic term structure
instead of Markov switching and relaxes the restriction on the specification
We employ a discrete-time Gaussian process for risk factors and give closed-form
solutions for yields and bond prices for any maturity as well as the previous
studies. We confirm that the proposed model captures the gradual level
shift of the bond yields and the market price of risk well. |