第24回応用経済時系列研究会・研究報告会




2007年6月30日(土)  10:40-17:00

情報・システム研究機構 統計数理研究所 講堂
東京都港区南麻布 4-6-7
(東京メトロ 日比谷線・広尾駅[H03]下車徒歩7分)


参加申し込み方法については別途こちらをご覧下さい

プログラム

午前の部 : 座長 阿竹 敬之(日興シティグループ証券) 報告35分,討論・質疑応答15分,計50分

10:40-11:30
「景気波及メカニズムのVAR分析」
後藤 康雄 (三菱総合研究所)
コメンテーター:佐藤 整尚 (統計数理研究所)

11:30-12:20
「投資信託リスク管理モデルとその有効性」
小又 雄一郎*、二俣 新、宮井 博 (日興フィナンシャル・インテリジェンス株式会社)
コメンテーター:山下 智志 (統計数理研究所)

12:20-13:40
昼食/理事会(統計数理研究所・特別会議室)

■ 13:40-14:00
総会 (統計数理研究所・講堂)




午後第1部  : 座長 津田 博史(ニッセイ基礎研究所)

14:00-14:50
「推定予測限界の補正法とVaRへの応用」
植木 優夫* (岡山大学大学院環境学研究科博士後期課程)
笛田 薫 (岡山大学大学院環境学研究科)
コメンテーター:牧本 直樹(筑波大学大学院ビジネス科学研究科)

14:50-15:40
「Seasonalities in Contrarian/Momentum Effects: Evidence from the Japanese Stock Market」
安達 哲也* (新光証券株式会社 エクイティ部)
石田 功 (東京大学公共政策大学院兼経済学研究科)
コメンテーター:川崎 能典 (統計数理研究所)


午後第2部 : 座長 進藤 久佳(野村證券)

15:50-17:00 [講演60分]
特別講演「不動産価格の時系列変動について―オフィス市場とJ- REIT市場を例として―」
川口 有一郎 (早稲田大学大学院ファイナンス研究科)


記号*は,複数著者による発表での,実際の登壇者を意味します.




要旨

「景気波及メカニズムのVAR分析」
後藤 康雄(三菱総合研究所)
景気循環は経済学における古くて新しいテーマであり、近年も、景気の波及メカニズムに関わる理論、実証両面の進展を踏まえた研究が積極的に行われている。具体的には、産業間や国際間のショックの伝播や、景気の連動性を生む要因などについて、DSGE(動学的一般均衡)モデルを用いたシミュレーションや、時系列分析の手法を用いた実証が数多くみられている。例えば、A国とB国の景気が連動しているようにみえるのは、A国のショックがB国に波及しているからなのか、それともA国、B国に共通のショックが働いているのか、などの視点が関心を集めている。本報告では、こうした近年の研究を展望した上で、特に時系列分析の手法を用いて、わが国の産業部門に関する実証研究を行う。併せて、景気の山・谷の判定において実務面で重用されているブライ・ボッシャン法や、経済変数の先行・遅行関係を検証する手法(グレンジャー因果性テストなど)を用いた結果とも、比較検討する。


「投資信託リスク管理モデルとその有効性」
小又 雄一郎*、二俣 新、宮井 博
(日興フィナンシャル・インテリジェンス株式会社)
2007年内に始まる新BIS規制対応を踏まえ、金融機関の保有する投資信託・ヘッジファンドのリスクを計量的に管理するモデルが求められている。
このため我々は、投資信託を対象としたVaR評価モデルの開発を行った。当該モデルでは、デルタ法に採用し、日次の価格変動リスクを捉える10種類のリスクファクターを使用している。さらに、それぞれのリスク特性を把握するリスクファクターの抽出にあたっては、全ての投資信託の運用内容を目論見書等から取得し分析手法としてステップワイズ法を採用することにより、投資対象ではないファクターや統計的に有意でないファクターを排除している。
この結果、国内籍投信(約2,000ファンド)に対するモデルの決定係数は大部分のファンドで0.5以上となったが、その有効性・安定性についてはさらなる検証が必要である。
そこで今回の研究会では、国内籍投信を対象としてVaR評価モデルの有効性・安定性についての分析を行った。具体的には、@VaRの構成要因別(分散共分散行列の「対角部分」「非対角部分」「ファクター部分」)の時間的変動、Aリターン分布の正規分布からのずれ、のそれぞれがVaR値に及ぼす影響について分析した結果を報告する。


「推定予測限界の補正法とVaRへの応用」
植木 優夫*(岡山大学大学院環境学研究科博士後期課程)
笛田 薫(岡山大学大学院環境学研究科)
市場リスクの測定方法の一つとして、バリュー・アット・リスク(Value at Risk, VaR)が用いられている。VaRは数理統計学的には分布の予測限界、それも分布の裾部分の予測限界であり、その推定には一般的に用いられている正規分布など分布全体を考察した理論よりも、確率変数の中で大きく外れた極値の振る舞いを論じる極値理論(Extreme Value Theory, EVT)が適している。
極値理論において従来用いられている主な予測限界推定法は、パレート分布、極値分布などを考え、そのパラメータをデータから推定、そしてその推定値を代入した分布の予測限界を、真の分布の予測限界の推定量として用いる方法である。しかしながらこの推定法は、パレート分布に限らず一般的に被覆確率の面で推定精度が高くない。本研究では、Ueki and Fueda (2007)で提案した推定予測限界の補正法をパレート分布に適用し、VaRの推定精度を高める方法を報告する。


「Seasonalities in Contrarian/Momentum Effects: Evidence from the Japanese Stock Market」
安達 哲也* (新光証券株式会社 エクイティ部)
石田 功 (東京大学公共政策大学院兼経済学研究科)
本稿では、日本株式市場における株式期待リターンのクロスセクションに関する新たな季節性について報告する。 Jegadeesh (1990) および Heston and Sadka (2005) によると、米国株式市場では過去12ヶ月の倍数月に相対的に上昇した(下降した)銘柄を買う(売る)という単純なモメンタム戦略が有意に正の月次プレミアムを示すことを報告している。 本稿では、Jegadeesh (1990) の手法を用いて、東京証券取引所第1部上場個別銘柄を対象に、12ヶ月倍数月(12,24,36,48 および60ヶ月)のラグ・リターンを銘柄属性とした月次モメンタム戦略のプレミアムを計測したところ、すべての12ヶ月倍数月で正のプレミアムを示した。 この結果は、日本株式市場における、過去リターンと将来リターンに関する既存研究には見られない新たなパターンである。 日本株式市場に関する既存の研究では、過去リターンと将来リターンとの間のリターン・リバーサル効果を確認した研究が多い。本稿の分析からは、これら個別銘柄リターンの暦月パターンは、単なる12ヶ月倍数月における実現リターンの自己相関ではなく、個別銘柄の期待リターンの暦月パターンである可能性が高いことが分かった(t-12月にリターンの高い銘柄はt月にもリターンが高い)。 また、暦月パターンは利益情報発表に大きく依存しているという事実も検出された。この季節性は、特定の月に偏って出現しているわけではなく、分析から特定月を除いても結果に変化は見られなかった。更に、リスク調整後の平均プレミアムは依然として有意に正であり、システマティック・リスクのみからでは、12ヶ月倍数月モメンタム戦略の収益を説明することはできないという結果を得た。

特別講演「不動産価格の時系列変動について―オフィス市場とJ- REIT市場を例として―」
川口 有一郎 (早稲田大学大学院ファイナンス研究科)
日本の不動産のリスクプレミアムを長期データから読み解く。
また、実物不動産やJREITの価格も他の資産同様に短期的には 系列相関を示し、長期的には平均回帰的な動きをするのかどうかについても検討する。
また、これらの価格のアノマリーについても紹介する。


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