日 時 |
2006年7月1日(土) 10:00-16:30 |
会 場 |
情報・システム研究機構 統計数理研究所 東京都港区南麻布 4-6-7 (東京メトロ 日比谷線・広尾駅[H03]下車徒歩7分) |
午前の部 : 座長 田村 義保(統計数理研究所) 報告35分,討論・質疑応答15分,計50分 |
■ 10:00-10:50 |
"The General Methodology to Identify the Payoff of the Real Option in the Business Strategy" 山田 雅章 (住友信託銀行) |
コメンテーター:新谷 仁志 (三井住友アセットマネジメント) |
■ 10:50-11:40 |
「債券市場の政策金利に関する期待値の変化とイールドカーブの形状」 〜カルマン・フィルターによる日本のイールドカーブの推計〜 勝 智彦 (日興シティグループ証券) |
コメンテーター:川崎 能典 (統計数理研究所) |
■ 11:40-12:40 |
昼食/理事会(統計数理研究所・特別会議室) |
■ 12:40-13:00 |
総会 (統計数理研究所・講堂) |
午後第1部 : 座長 津田 博史(ニッセイ基礎研究所) |
■ 13:00-13:50 |
「景気転換指標の日本経済への適用」 酒井 博司 (三菱総合研究所 政策・経済研究センター) |
コメンテーター:山澤 成康 (跡見学園女子大学) |
■ 13:50-14:40 |
「金融資産価格変動のジャンプ・ダイナミックス」 陳 春航* (琉球大学) 佐藤 整尚 (統計数理研究所) |
コメンテーター:安達 哲也 (新光証券) |
午後第2部 : 座長 池田 義男(茨城大学) |
■ 14:50-15:40 |
「ペア・トレーディングの収益性」 安達 哲也 (新光証券) |
コメンテーター:笛田 薫 (岡山大学) |
■ 15:40-16:30 |
「Credit Default Swaps市場の業種間価格変動について」 田野倉 葉子* (統計数理研究所) 津田 博史 (ニッセイ基礎研究所) 佐藤 整尚 (統計数理研究所) 北川 源四郎 (統計数理研究所) |
コメンテーター:進藤 久佳 (野村證券) |
記号*は,複数著者による発表での,実際の登壇者を意味します. |
"The General Methodology to Identify the Payoff of the Real Option in the Business Strategy" 山田 雅章 (住友信託銀行) |
It is well known that a corporation has a lot of real option in its business strategy. Though the concept of the real option spreads out, the practical use of the real option is very limited. One of the subjects limiting its practical use should be the opaque relationship between the corporate value and the payoff of the real option. In this presentation the general methodology to value the real option is proposed. The case study of this methodology shown in this presentation suggests that this methodology should promote the practical use of the real option in the business. |
「債券市場の政策金利に関する期待値の変化とイールドカーブの形状」 〜カルマン・フィルターによる日本のイールドカーブの推計〜 勝 智彦 (日興シティグループ証券) |
量的緩和政策下におけるイールドカーブの形状は,時間軸効果(ゼロ金利政策を続けるという日銀と債券市場の約束)に多大な影響を受けていた.しかし,量的緩和政策が解除され時間軸効果が過去のものとなった今,イールドカーブの形状において多大な影響を与えているのが,債券市場における将来の政策金利の水準に対する期待値である.例えば,債券市場が日銀は0.5%の政策金利の引き上げを望んでいると想定している場合と1.0%の政策金利の引き上げを望んでいると想定している場合では,当然,イールドカーブの形状に大きな違いが出てくる. 本稿では,こうした政策金利の期待値がイールドカーブの形状にどのような影響を与えるのかを考察している.なお,政策金利の期待値は観測できない変数のためカルマン・フィルターを用いる. |
「景気転換指標の日本経済への適用」 酒井 博司 (三菱総合研究所 政策・経済研究センター) |
景気の局面判断を迅速かつ正確に行うことは,政府の経済政策の決定や企業の戦略策定において極めて重要な課題である.しかし,既存の公表統計のみから景気の局面判断を的確に行うことは難しい.GDPや景気動向指数は,景気判断において非常に有効な指標であるものの,公表の遅さや統計学上の問題等の各種問題点がある.そこで,公表統計の欠点を補う有効な指標を作成することで,景気判断を迅速かつ正確に行うことを試みる. ここでは公表統計では対応しきれない部分を明確にした上で,主として,@客観的かつ先行的な判断を可能とすること,及び,A精度を高めること,に主眼を置いて,Stock and Watson (1991)が開発した手法等の,日本経済への適用を試行する.その際,特に「景気の転換点を正確に予測できる」という観点と,経済を構成する分野の「網羅性」の観点を重視し,モデルに適用する系列を選択するよう試みる. 今回の新試作指標による導出された景気転換点シグナルは良好なパフォーマンスを示しており,既存公表統計を補完して用いることで,より的確な景気判断を行うことが可能になるものと思われる. |
「金融資産価格変動のジャンプ・ダイナミックス」 陳 春航* (琉球大学),佐藤 整尚 (統計数理研究所) |
Studies in empirical finance reveal that stock prices and many other financial asset prices jump, that jumps turn out to cluster, and that jump arrivals are time- and state-dependent. So far, some jump-diffusion models and jump stochastic volatility (SV) models have been proposed to deal with jumps. However, in these models jump arrivals within a constant period (one day, say) are assumed to be independent and identically distributed, which is unrealistic from a statistical point of view. In this study, we extend the GARCH models and propose a nonlinear time series model for returns, which we call a jump-type GARCH model, in which the jump-intensity is allowed to be time-varying and also state-dependent. We discuss maximum likelihood estimation for this model. Using this model, we can estimate the ex post probability that jumps have occurred. Based on this model, volatility is decomposed into two sources: GARCH-volatility and jump volatility, and the relative contributions of these volatilities to total volatility characterize volatile and less volatile stocks. For example, our data analysis shows that volatile stocks jump more frequently than less volatile stocks, and that jump-volatility of volatile stocks contributes to total volatility more than that of less volatile stocks on the whole. Our model also reveals some other new and important facts on jump-mechanism, volatility and distribution of stock returns. |
「ペア・トレーディングの収益性」 安達 哲也 (新光証券株式会社 エクイティ部) |
ペア・トレーディングのコンセプトは非常にシンプルである.それは,同じような動きをする2銘柄の株価の差に注目し,その一時的な乖離が元の水準に戻ろうとする過程で利益を得ようとするものである.本稿では,東京証券取引所一部上場株式の内流動性のある銘柄を対象に,銘柄ペア選択を統計的な基準によって行い,その収益性の源泉について検証する. 運用実務ではスタンダードに用いられているペア・トレーディングであるが,アカデミック・レベルで公表されている研究は数少ない.ペア・トレーディングの発祥の地である米国においてもアカデミックにおける実証研究は Gatev, William and Goetzmann (1999) を例外とする他は,ほとんど見当たらない. 日本においては宇高(他4名)(2003) が,共和分(cointegration)をフィルター・ルールとして採用し,ペア・トレーディングの有効性を報告している. 本稿でも,基本的なフィルター・ルールとして共和分を採用するが,分析の最大の特徴として,イベント・スタディの手法を取り入れていることである.ペア・トレーディングにおいてイベントの発生とは,2銘柄間価格の乖離であり,イベント発生後一定期間の収益性を測定する.本稿ではイベントの発生を日次で捉えている.また,代替的フィルター・ルールとの比較,銘柄属性別ペアの収益性の計測,および収益性のシステマティック・リスクを計測することにより,共和分を用いたペア・トレーディングの収益性の頑健性について検証する. |
「Credit Default Swaps市場の業種間価格変動について」 田野倉 葉子* (統計数理研究所),津田 博史 (ニッセイ基礎研究所), 佐藤 整尚 (統計数理研究所),北川 源四郎 (統計数理研究所) |
近年,国内外の資本市場で起きている構造的な変化により新しい金融手法が開発され,その結果新しい金融商品の取引市場が次々に登場し,急速に発展している.これに伴い,国内外の資本市場を取り巻くさまざまな金融リスクが注目されている.実際,金融システムのグローバル化や情報伝達の高速化により,信用不安といった金融ショックの波及は国際的に重要な問題となってきており,グローバルな金融リスクマネジメントには科学的なリスク解析法の導入が必要不可欠である.本研究は,最近わが国で取引市場が急速に拡大・成長している,信用リスクをヘッジする派生商品Credit Default Swaps(CDS)の市場構造を解析し,世の中の信用リスク指数の開発を目指す上で,CDS市場における業種間の価格変動に一般化パワー寄与率を適用し解析を行った.実証分析の結果,各業種間の価格変動構造に対して新しい知見が得られたことを報告する. |