2005年度 応用経済時系列研究会
チュートリアルセミナー




チュートリアルセミナー
懇親会
2005年10月21日(金)  13:30-18:05
2005年10月21日(金)  18:30-20:30

SGIホール[恵比寿ガーデンプレイスタワー地下1階]
東京都渋谷区恵比寿4-20-3
☆JR 山手線 恵比寿駅下車徒歩7分
☆東京メトロ日比谷線 恵比寿駅下車徒歩10分

今年度はチュートリアルと報告会で会場が異なりますのでご注意下さい!

参加申し込み方法については別途こちらをご覧下さい.
懇親会(於・ビアステーション恵比寿)は席数に限り
がございますので,お早めにお申し込み下さい.

■■チュートリアルセミナー・プログラム■■

(各講演60分+質疑応答20分を目安に進行します)

座長 吉田 靖 (千葉商科大学)
13:30-14:50 鎌田 康一郎 (日本銀行 企画局)
「わが国の潜在産出量と需給ギャップ:その金融政策への含意」
14:50-16:15 井野 靖久 (内閣府 計量分析室 参事官)
「経済財政政策の中長期展望」
16:15-16:35 休憩
16:35-18:05 松岡 幹裕 (ドイツ証券 経済調査部)
「経済指標と金融市場:合成サプライズ指数(CSI: Composite Surprise Index)の開発」
18:30-20:30 懇親会 (会場:ビアステーション恵比寿, 参加費4,000円)

概要

鎌田 康一郎 (日本銀行 企画局)
「わが国の潜在産出量と需給ギャップ:その金融政策への含意」
「需給ギャップ」とは,実際の生産量の「潜在産出量」からの乖離率のことであり, 両者はコインの表と裏の関係にある.需給ギャップは,物価変動の要因と考えられており,物価の安定を目標とする日本銀行にとっても, 重要なコンセプトである.需給ギャップは直接観測できない変数であり,何らかの方法でこれを推計する必要がある. 需給ギャップの推計は,これといって決まった方法があるわけではなく,これまでに様々な手法が開発されてきた. 日本銀行でも,1980年代の末頃から,需給ギャップ指標の開発がはじまり,現在では,政策判断の参考として,複数の指標を併用している. 実際,推計された需給ギャップをテイラー・ルールに代入すれば,1990年代前半までの無担保オーバーナイト・コールレートの動きを説明することも可能である. 需給ギャップの推計値は様々な不確実性に晒されている.中でも,データの速確誤差など,リアルタイム推計に纏わる問題は, 素早い景気判断を必要とする中央銀行にとって,厄介な問題である.とりわけ,データが蓄積されるごとに産出量のトレンド, すなわち,潜在産出量の推計値が変化し,需給ギャップの推計値が変化することのリスクは大きい. 需給ギャップ指標をいま以上に活用するためには,こうした不確実性を定量化し,それを削減する手段を開発することが不可欠となる.

井野 靖久 (内閣府 計量分析室 参事官)
「経済財政政策の中長期展望」
「構造改革と経済財政の中期展望」(以下,「改革と展望」という.)は,2002年1月に閣議決定されて以来, 毎年改訂されている.「改革と展望」では,デフレの克服と民間需要主導の持続的な経済成長の実現,国・地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化 (2010年代初頭)を実現するとしている.内閣府では,こうした展望・目標がどのような経路で実現可能であるかについて, マクロ計量モデルによる試算を行い,提示している.本年1月の同試算では,構造改革努力と財政収支改善努力を前提として, 実質1.5%程度あるいはそれ以上の経済成長率が達成されるとともに,2012年度に国・地方を合わせた基礎的財政収支が黒字化することが示されている.  同試算は,内閣府で開発した「経済財政モデル」によっている.同モデルは,マクロ経済ブロック,財政ブロック (国・地方それぞれのサブブロックにより構成),社会保障ブロックから成り,それぞれが相互に連関する体系となっている. このため,マクロ経済変数(成長率,物価,金利等)を前提として固定したうえで,財政変数の将来試算を行うもの (例えば,財務省の「後年度影響試算」)とは異なり,全体としての整合的な姿を示すことができる.   なお,「改革と展望」では,2006年度までは歳出改革路線を堅持・強化する方針が示されているが, 2007年度以降については具体的な方針は示されていない.このため,内閣府試算では2010年代初頭までの財政収支改善策について, 便宜的な仮定を置いて試算を行っている.今後は,歳出側と歳入側の手段をどのように組み合わせて, 2010年代初頭の基礎的財政収支黒字化を達成するのか,という具体的な課題の検討が必要である.

松岡 幹裕 (ドイツ証券 経済調査部)
「経済指標と金融市場:合成サプライズ指数(CSI: Composite Surprise Index)の開発」
経済統計の実現値やサプライズ(=実現値−コンセンサス)が日々の金融指標(株価,10年債利回り) に与える影響を求めるために,日次ベースの合成指数を作成した.これは,各統計の過去の実現値平均ないしはサプライズ平均からの乖離を, 標準正規分布に従うように標準化し,日々の平均値をとったものである(統計が発表されない日はゼロの値をとる). グランジャーの因果性テストやインパルス応答関数によって,これらの標準化された実現値ないしはサプライズから金融指標への影響を調べると, 実現値よりもサプライズが統計的に有意かつ持続的な影響を与えることが確認できる. 10〜20営業日という比較的短期間にプラスないしはマイナスのサプライズが連続的に発生する場合には, 株価や債券利回りには無視できない持続的な影響が表れると考えられる.しかし,金融市場が同一方向のサプライズの連続的な発生に対応し始めるので, サプライズが無限に続くわけではない.標準化されたサプライズの43営業日移動平均は約4.5ヶ月の周期で,景気循環とは独立して変動しており, これが金融市場心理の揺れを表すと考えられる.2004年以降,標準化されたサプライズの43営業日移動平均が, 株価や10年債利回りに先行する局面が出てきたことは,金融市場の情報処理が効率的になったことを表すと同時に, 金融指標の先行性が失われつつあることをも示唆している.時間が余るようであれば,(1)世界実質金利の成立, (2)金融指標の景気に対する先行性の弱まり,についても言及したい.



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